雫雫

「雫雫」とは、日本を代表する建築家である
隈研吾氏が中心となり、
日本古来から続く和の美意識や
ライフスタイルを世界に発信することを
目的に
立ち上がったプロジェクトです。

The Five Sences

人間の五感

「雫雫」で最初に手掛けたのは人間の五感に働きかける香りのプロジェクト。 コロナ禍で私たちは行きたい場所へ旅をしたり、家族や友人を訪ねたり、大切な人と時間を過ごす「自由」を失いました。その代わり、「香り」が特定の場所の思い出を想起させてくれるということに気づきました。
「香り」は私たちの記憶と深くつながっていて、美しい記憶に色彩を与え、心に安らぎを与えてくれるものだと、その重要性を再認識する機会となりました。私たちは日本の文化のさまざまな美しさとスタイルを反映する5つの異なる場所を選びました。各場所には独自の個性があり、独自の香りがあります。日本のこれらの場所を訪れたことのある人はその場での思い出を、ない人はその場所を想像させるものになればと考えました。

Scent

香り

「香籠」は、自然への敬意を表現するために制作されたアート作品です。このアートピースを構成する最も重要な部分は京都の竹で作られた竹筒で、竹は日本文化でも自然の精神性を表す材料であり、隈研吾氏の建築デザインの多くで用いられている象徴的な材料でもあります。建築は自然環境との調和が重要です。そして、香りは環境の重要な要素でもあります。香りのオイルを注ぐ器は常滑(とこなめ)の陶器で、それぞれ違った色でつくられています。それを包む竹筒は「やたら編み」という技法で編まれ、アートピースとしての存在を感じさせながらも、香りと共に「環境」をつくるものになっています。

隈 研吾

Scene

天と地をつなぐ場所。樹海と氷。

Mt.Fuji

富士山

日本最高峰の富士山のその「高さ」のみならず、富士山のもつ神聖なイメージをメインコンセプトに調香。
「神聖さ」と「清浄」を感じる香りとして、高野槙やローズマリーを中心に香りをブレンド。クリアなハーブの香り。

古くて新しくて、意地悪でやさしい。
水面に反響する光と音。

Kyoto

京都

京都の寺社仏閣などで感じられる「静寂=侘」をメインコンセプトに、瞑想や鎮静を想起させる香りとして調香。中心となっている香りは京都の北山杉で、檜や松などが配合されている。ウッディな香り。

僕の場所。
大きくて、小さくて、乾いていて、湿っている。
低温と高温の混合。まん中の大きなヴォイド。

Tokyo

東京

様々な文化、そして首都として新しさと古さを併せもつ世界有数の大都市、東京。その多様性と日本人の精神性と結びついていると言われる桜の香りがメインコンセプト。桜を表現するためにパルマローザやイランイランなどをブレンドし、愛情や洗練が感じられる香りに。フローラルな香り。

湿った森。火山の石ころ。
唐松と白樺の木立ちが作る無数の線。

Karuizawa

軽井沢

日本有数のリゾート地、「軽井沢」は古くから人々の癒しの避暑地として愛されてきた。深い緑に囲まれた軽井沢の穏やかさと癒し、強壮を感じられる香りとして、黒文字やヒメコマツをエッセンスに、ユーカリやプチグレインもブレンド。グリーンスパイシーな香り。

琉球石灰岩のグレーベージュ。
青くて緑色で甘い海。

Okinawa

沖縄

青い空と海に原色のフルーツ。温かい気候で心も解放されるビーチリゾート、沖縄。そんな沖縄での時間、「楽しさ」と「アクティブ」なイメージを柑橘の香りで表現。オレンジやタンジェリンにゼラニウムなどもブレンドされてフルーティさに明るく愉快な印象をプラスしたイメージで香りを作成。フルーティな香り。

隈 研吾

Kengo Kuma

1954年生。東京大学大学院建築学専攻修了。1990年隈研吾建築都市設計事務所設立。東京大学教授を経て、現在、東京大学特別教授・名誉教授。
1964年東京オリンピック時に見た丹下健三の代々木屋内競技場に衝撃を受け、幼少期より建築家を目指す。大学では、原広司、内田祥哉に師事し、大学院時代に、アフリカのサハラ砂漠を横断し、集落の調査を行い、集落の美と力にめざめる。コロンビア大学客員研究員を経て、1990年、隈研吾建築都市設計事務所を設立。これまで30か国を超す国々で建築を設計し、(日本建築学会賞、フィンランドより国際木の建築賞、イタリアより国際石の建築賞、他)、国内外で様々な賞を受けている。その土地の環境、文化に溶け込む建築を目指し、ヒューマンスケールのやさしく、やわらかなデザインを提案している。コンクリートや鉄に代わる新しい素材の探求を通じて、工業化社会の後の建築のあり方を追求している。

Photo © J.C. Carbonne